坂井 ノーベル経済学賞を受けた経済学者フリードリヒ・ハイエクが、1945年の論文でその理由を論じています。情報は社会のあちこちに散らばっていて、一人ですべてを知る者はいない。人々がそれぞれの情報に基づいて売買するので、価格にはその散らばった情報が集まる。予測市場は、このハイエクの考えを、未来の予測に直接使うものです。

結果を操作できる人を
締め出す

――予測市場で儲けるために、結果を操作する人は出てきませんか?

坂井 ありえます。だから場合によっては、参加者に制限が要ります。例えば、試合に出る選手が、自分の試合の勝敗に賭けたとしましょう。その選手は、わざと負ければ確実に儲けられます。ですから、結果を左右できる人を参加させないこと、参加者が結果を変えられる出来事を問いにしないことが、運営の鉄則です。

――日本からも予測市場に参加できるのでしょうか?

坂井 お金を賭ける予測市場には、参加してはいけません。海外の予測市場でお金を賭けて売買すれば、日本では賭博に当たる可能性が高いからです。

 ただ、基本的には、違法になりうるのはお金を賭けることです。予測市場という仕組みそのものではありません。専門の弁護士のチェックは不可欠ですが、お金ではなくポイントを使って運営すれば、予測市場を合法に運営できる余地があります。

――そのような予測市場は、どこで使えますか?

坂井 企業が社内で使う「社内予測市場」から広がると考えています。組織では、現場の悪いニュースが上層部に届きにくい。上司に悪い報告をするのは気が重いし、報告すれば仕事が増えるからです。そこで例えば「新システムは期限内に完成するか」という問いを立て、社員に社内ポイントで券を売買してもらいます。現場が遅れに気づけば、券が売られて価格が下がります。役員は、その下落を見て異変を察知できます。

 先例もあります。パソコン大手のヒューレット・パッカードでは1990年代後半、社員が次の四半期の売上を予測する市場を開きました。担当者による公式の予測と比べられた8回のうち、6回は市場のほうが実際の売上に近かった。私は10年以内に、多くの日本企業が同様の仕組みを導入すると見ています。不祥事の検知にもきわめて有用だと思います。

>>「予測市場」についてマンガで読む!
【マンガ】恋する株式相場! 「ふたりの予測市場は波乱含み!?」

「ダイヤモンドZAi」2026年11月号の連載マンガ「恋する株式相場!」(ホイチョイ・プロダクションズ著)より。今回のテーマは「予測市場」。画像をクリックでマンガに遷移。
「ダイヤモンドZAi」2026年11月号の連載マンガ「恋する株式相場!」(ホイチョイ・プロダクションズ著)より。今回のテーマは「予測市場」。画像をクリックでマンガに遷移。

本記事は2026年10月14日時点で知りうる情報を元に作成しております。本記事、本記事に登場する情報元を利用してのいかなる損害等について出版社、取材・制作協力者は一切の責任を負いません。投資は自己責任において行ってください。