>>「予測市場」についてマンガで読む!
【マンガ】恋する株式相場! 「ふたりの予測市場は波乱含み!?」
世論調査と予測市場
決定的な違いは「行動」にある
――選挙の勝敗を予測する際、世論調査では足りないのでしょうか?
坂井豊貴さん(以下、坂井) ひどく不十分です。2024年の米大統領選挙がよい例です。アイオワ州の世論調査家アン・セルツァーは、精度の高さで全米に知られていました。そのセルツァーが投票日の3日前、アイオワ州で民主党のハリス氏が47%対44%で共和党のトランプ氏を上回る、という調査結果を発表しました。ところが結果は、トランプ氏が13ポイント以上の差で勝ちました。セルツァーはその後、世論調査からの引退を表明しています。
世論調査では、うそをついても、よく知らずに答えても、回答者は何も損をしません。だから、トランプ氏に投票するつもりでも、調査員にはハリス氏と答える人が出てきえます。こうした回答をいくら多く集めても、予測の精度は上がりません。
――予測市場は、そこがどう異なるのですか?
坂井 参加者が、自分のお金を懸けて売買する点です。トランプ氏が勝つと内心で思いながら、ハリス氏の勝ちに賭ける人はいません。お金を失うからです。行動は、口先より雄弁です。政治に詳しくない人は、そもそも売買に加わりません。逆に、自信があってよく調べている人は、多くのお金を投じます。世論調査は一人一票で数えますが、予測市場では詳しい人ほど価格を大きく動かすわけです。
「当たれば1ドル」の券の価格が
確率を表す
――具体的には、何を売買するのですか?
坂井 例えば「ある候補が当選すれば1ドルになり、落選すれば0ドルになる」という券です。この券が46セントで売買されていれば、市場はその候補の当選確率を46%と見ている、と読みます。
価格を確率と読むのは雑に見えますし、私も最初はそう思いました。しかし相応の理論的な裏付けはあります。参加者は、券の価格が自分の見立てる確率より安ければ買い、高ければ売ります。だから価格は、参加者たちの見立てる確率に近づいていくのです。
――競馬の馬券に似ていますね。
坂井 似た面はあります。ただ、馬券は一度買うと、それを売買する市場がありません。予測市場の券は、結果が出る前に売れます。46セントで買った券を60セントで売れば、14セントの利益です。だから、その候補に有利なニュースが出れば、すぐに券が買われて価格が上がります。世論調査は調査した時点の数字しか示せませんが、予測市場の価格は、ニュースのたびに刻々と動きます。
――予測市場は、新しい仕組みなのですか?
坂井 予測市場は新しい仕組みですが、昔は選挙賭博というものがありました。例えば米国では1940年あたりまで、ウォール街では大統領選挙の賭けが株のように売買されていました。経済学者のローデとシュトルンプフの研究によれば、この間の15回の選挙で、投票日の約1カ月前に優勢とされた候補が負けたのは、1916年の1回だけです。科学的な世論調査がまだない時代に、これだけ当てていたのです。1988年に米アイオワ大学が、研究のための予測市場「アイオワ電子市場」を始めています。
――なぜ市場の価格は、よく当たるのでしょうか?