AI・半導体株が世界の株式市場を牽引する一方、関連ニュースをきっかけに株価が大きく下がる場面も増えている。S&P500やオルカン(全世界株)も米国の大型ハイテク株の比重が高く、AI相場の調整に連動しやすい。AIの成長を取り込みつつ、資産全体の大幅な値下がりは抑えたい――。そこで注目したいのが、AI・半導体株とは異なる値動きをする“守りの世界株”だ。生活に欠かせない電力網や水道、有料道路、空港などを独占する企業に投資する「東京海上・世界モノポリー戦略株式ファンド」は、2020年3月の設定来で基準価額が約2.56倍に上昇。過去の世界株安でも下落幅を抑えてきた。なぜ値動きが安定しているのか。実質的な運用を担うマゼラン・アセット・マネジメントのベン・マクビカーさんに、その理由と銘柄選びの方法を聞いた。(今村光博、ダイヤモンドZAi編集部)
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銘柄数を増やすだけでは不十分!
“異なる値動き”の組み合わせが本当の分散
――AI・半導体株が相場を牽引する一方、値動きも大きくなっています。幅広く分散されたオルカンやS&P500も、AI相場の変動リスクに注意を払うべきでしょうか。
写真=GION
マクビカー オルカンやS&P500は多くの銘柄に分散していますが、時価総額の大きい企業ほど組入比率が高くなる仕組みです。そのため、米国の大型IT企業やAI・半導体関連株の株価が大きく動けば、指数全体も影響を受けやすくなります。銘柄数が多いからといって、値動きの要因が十分に分散されているとは限りません。
AIが現在の株式市場や米国経済を支える重要な成長ドライバーであることは間違いなく、インデックス投信を保有する投資家もその恩恵を受けてきました。ただし、この高い成長が今後も同じペースで続くかを正確に予測するのは困難です。米国の大手IT企業が設備投資を抑えれば、AI向け半導体やデータセンター関連企業の業績見通しが悪化し、複数の関連銘柄が同時に下落する可能性があります。オルカンやS&P500を保有していても、AI関連株への実質的な偏りには注意が必要です。
――AI株の成長の恩恵は受けつつ、値動きは抑えたいのですが……。
マクビカー 投資成績を安定させるうえで重要なのは、単に保有銘柄を増やすことではありません。収益を生み出す仕組みや、株価が動く要因が異なる資産を組み合わせることこそが、本当の意味での分散投資です。AI・半導体関連株ばかりを何銘柄も持っていたら、AI投資の減速や半導体市況の悪化といった同じニュースで、一斉に下落しかねない。
だからこそ、AI・半導体株に加えて、私たちのファンドが投資する電力網や空港、有料道路のようなモノポリー(独占)企業を組み合わせることが有効になります。こうしたモノポリー企業は、規制や長期契約に支えられ、AI関連株とは違う要因で利益を積み上げます。長期で安定した資産をつくるうえで大切なのは、大きく上がる投資先を当てにいくことではなく、それぞれ異なる環境で力を発揮する資産を組み合わせることです。
高い参入障壁と安定収益が強みの
モノポリー企業とは?
――“モノポリー企業”について、もう少し具体的に教えてください。
マクビカー 私たちが考えるモノポリー企業は、単に市場シェアが高い企業ではありません。条件は次の3つです。
1. 一定の国・地域で、モノやサービスを独占的に提供している
2. 生活に必要不可欠なモノやサービスを提供している(公益企業)
3. 規制や契約に守られ、価格競争にさらされにくく収益が安定している
こうした企業は、新規参入が難しく、安定した収益を確保しやすいのが特徴です。そのため将来の利益を見通しやすく、景気が悪化しても業績が大きくブレにくい。これが、私たちのファンドの値動きが安定している理由の一つです。代表的な投資先には、電力の送配電、水道、ガス、有料道路、空港などがあります。
――こうした公益企業は収益が安定していて、将来の業績を読みやすいということですね。
マクビカー ええ。例えば、ある地域にすでに電力の送電線が張り巡らされているとします。同じ地域に別の会社がもう一組の送電線を敷いて競争するのは、経済的にも現実的ではありません。水道管や有料道路、空港も同じです。巨額の建設費に加え、土地や行政の許可も要るため、新規参入は難しいのです。
私たちが重視するのは、その企業が将来も高い料金を取れるかどうかではなく、10年、20年先まで安定してサービスを提供し、利益を積み上げられるかどうか。国や地域で規制制度は異なるため、政府の介入が過度に強くないか、規制当局が一貫したルールを運用しているかも慎重に確認します。独占的な企業でも、政治的な判断で利益を大きく削られる恐れがある場合は、投資対象にしません。