ユニークなテーマに挑み続ける経営学者・高橋勅徳さん。2年半で300万円以上を投じた婚活の体験談を、高橋さんは研究へと昇華し、論文を発表。後に著書『婚活戦略』を発表すると、メディアから注目の的に。知識や経験を“資産”として小さく稼ぐ姿勢は、「そこそこ起業」のコツにも通じている。その3つの鉄則に迫った。(渡辺賢一、ダイヤモンドZAi編集部)

「ダイヤモンドZAi」2026年11月号「インタビュー連載 あの人に聞きたい! おカネの本音」を基に再編集。データはすべて雑誌掲載時のもの。

プライベートでの体験談が
まさかの人気論文に!

──「婚活戦略」は、ご自身の婚活体験から始まったのですね。

 ゼミの教え子が婚活総合サービス会社に就職して、「先生は公立大学の准教授で収入も高いから、婚活したらすぐ相手が見つかりますよ」と勧めてくれたのがきっかけです。当時は43歳で独身でした。

 そこで、婚活パーティーや結婚相談所、マッチングアプリなどを2年半ほど利用しました。

──結果はいかがでしたか。

 今も独身です(笑)。実際に婚活をしてみてわかったのが、人間がまるで“商品”のように比較されることでした。顔写真に年齢、年収、職業などが並び、利用者はカタログを見るように相手を選びます。

 収入が多少高くても、同じような条件の男性は多い。そうなると若さや見た目などの条件が効いてきます。アラフォーのおじさんでは、若いイケメンには、勝てません(笑)。

 その仕組みに気付くまでに2年半。デート代なども含めると、婚活には300万円以上使いました。

──かなり高い授業料ですね……。

 でも、転んでもただでは起きませんでした(笑)。経営学者の目で、婚活は「なぜ人の価値が条件によって序列化されるのか」といった研究テーマが見えてきたんです。

 そこで2020年に、自分の婚活体験をもとにした学術論文を発表しました。すると研究者だけでなく、一般の人にも広く読まれた。その後、『婚活戦略』という本を出すと、新聞やテレビ、ウェブ番組などからも声がかかるようになりました。

 印税や出演料、講演料などで、婚活に使った約300万円を結果的に回収できたんです。

──婚活に使ったおカネが、別の形で戻ってきたわけですね。

 そこで、稼ぎ方に対する考え方に新たな視点が加わりました。学術書は、必ずしも儲かるものではありません。研究費や補助金を使って出版したり、自腹を切ることもあります。

 ところが学術書であっても、うまく一般の読者にリーチするテーマで文体も工夫して書けば、出版社がおカネを出して、本を作ってくれる。そして売れれば印税が入る。「自分が持っている知識や経験そのものが、おカネを生む資産になるんだ」と実感したんです。

──どういうところで「資産」だと実感したのでしょうか。

 本を出すたびに、自分の中に小さな“おカネを生む資本”が一つずつ増えていく感覚なんです。株で毎年300万円の利益を得ようと思えば、かなりの元手が必要です。でも、自分の知識や経験を使う商売なら、大きな元手はいりません。

東京都立大学大学院准教授の高橋勅徳さん
写真=圷 邦信

──いまも、そうした“小さな商売”を続けているのですか。

 やっています。大学教員という本業は続けながら、本を書いたり、メディア出演をしたりしています。自分で有料メルマガも始めました。

 僕は何万人、何十万人というフォロワーを集めるインフルエンサーになりたいわけではありません。例えば、自分の話を聞きたい人が20人いて、1000円払って勉強会に参加してくれれば2万円になります。

 それで、好きな釣り船に乗る代金が払えます。それは、僕には十分価値があります。自分の好きなことをするためのおカネを、自分の知識や経験を使って、小さく稼ぐんです。