稼ぐ柱を増やせば
投資でもリスクを取れる

――Takさんご自身は、大学卒業後に金融の世界へ進んだんですね。

Tak はい。北米の大学を卒業した後、欧米系の金融機関で4年ほど債券を担当しました。債券からキャリアを始めたことは、今の投資スタイルにも大きく影響しています。債券は金利や景気、インフレなど、マクロ経済の動きに大きく左右されます。そのため、個別の企業や銘柄を見る前に、まず経済全体がどちらへ向かっているのかを考える癖がつきました。この視点は、現在の投資判断にもつながっています。

 その後、ビジネススクールでMBAを取得し、在学中には大手運用会社で株式運用のインターンも経験しました。資格取得後は米国の大手コンサルティング会社などで、M&Aのデューデリジェンス(企業買収の前に、事業や財務内容を詳しく調べる仕事)に携わりました。その後はベンチャー企業に移り、資金を調達する側も経験しました。

 債券、株式、企業分析、資金調達と、金融をさまざまな立場から見てきたことで、投資を単なる「商品選び」としてではなく、資金がどこから入り、どこへ向かっているのかという流れで考えるようになりました。

――独立した現在は、どのような仕事をされているのですか。

Tak 超富裕層の資産運用の事業に加え、不動産や住宅ローン、生命保険の仲介など複数の事業を手掛けています。意識している点は2つ。まず、収入源を一つに依存しないことです。また、会社の株式は100%自分で保有すること。外部からの出資は受けません。

――外部資本を入れないのは、なぜですか。

Tak ベンチャー企業で資金調達に関わったとき、外部資本を入れるたびに意思決定の自由度が下がっていく場面を見てきたからです。私は、人のお金を入れて会社そのものを大きくするより、自分でコントロールできる範囲で着実に利益を積み上げるほうが合っています。

――不動産や保険などの仲介事業を組み合わせるメリットは?

Tak アメリカでは銀行以外にも多くの貸し手が存在し、ブローカーを通さないと利用できない融資があります。通常より短期間で融資をまとめたり、日本に住みながら米国の保有物件を担保に資金を借りたりと、個別性の高いニーズにも対応しています。

 こうした事業を組み合わせているのは、収入を安定させるためです。資産運用は長期にわたって顧客資産に責任を負う仕事ですし、市況によっては新しい資金が集まりにくい時期もあります。

 また、お客様にとっても私が一つ分野の知識しか持っていないより、複数の視点から資産形成を相談できる相手である方が安心してもらえると実感しています。例えば不動産ブローカーの収入に依存していると、どうしても高額な物件を売ることが、自分のインセンティブとなりやすい。

 だからこそ、運用だけに依存せず、不動産やローン、保険の仲介など、異なる収入源を持っておく。一つの事業が伸び悩んでも、別の柱で補える状態をつくることが、独立して事業を続けるうえでは重要だと考えています。

再融資で次の現金を引っ張り出し
暴落で優良物件を買い叩く富裕層の不動産投資術

――ご自身の資産は、どうやって築いてこられたのですか。

Tak 正直に言えば、最初の頭金は親に助けてもらいました。ただ、その後はアメリカならではの仕組みを活用して資産を増やしました。カギになったのが、「キャッシュアウト・リファイナンス」と呼ばれる再融資です。保有する家の評価額が上がると、その新しい評価額を基にローンを組み直し、増えた資産価値の一部を現金として引き出せます。

 たとえば、1億円の家に8000万円のローンを組んでいたとします。家の評価額が1億4000万円に上がれば、条件次第で借入額を増やし、その資金を次の物件の頭金に回せる。私はこの仕組みを使い、コロナ・ショック下の2020年に1年で2軒のアパートを取得しました。当時は住宅ローン金利も低かった。さらに自宅の一部を貸して家賃収入を得ることで、住居費の負担も大きく下げられました。

――不動産投資で資産を増やすうえで、どのような点を意識していますか。

Tak 大きく二つあります。一つは、買うタイミングです。リーマン・ショックやコロナ・ショックのような大幅な下落局面でも、私が見てきた富裕層は積極的に不動産を買っていました。多くの投資家がリスクを避ける局面ほど、優良な資産を割安に取得できるチャンスが生まれやすいからです。

 もう一つは、税制を含めてキャッシュフローを考えることです。不動産では減価償却を活用することで、税務上の利益を抑えられる場合があります。建物の取得価額を一定期間にわたって費用として計上するため、実際には現金が出ていなくても経費を計上でき、その分、手元資金を残しやすくなります。

 私が現在取り組んでいるのが、大型の組み立て式住宅を活用した投資です。一定の要件を満たせば「車両」として扱われ、比較的短期間で減価償却できるため、投資家にとって税務上のメリットが生まれるケースがあります。実際に、事業パートナーがテキサスに所有する土地に設置し、1泊200ドルほどの宿泊施設として投資家から資金調達をおこない、運用する取り組みも始めています。

工場で製造した住宅を現地へ運び、設置して利用する「マニュファクチャード・ホーム」。移設可能な構造ながら、室内には一般住宅と同様の設備を備える。Takさんはテキサスで宿泊施設として運用している。画像は「ManufacturedHomes.com」より。
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工場で製造した住宅を現地へ運び、設置して利用する「マニュファクチャード・ホーム」。移設可能な構造ながら、室内には一般住宅と同様の設備を備える。Takさんはテキサスで宿泊施設として運用している。画像は「ManufacturedHomes.com」より。
工場で製造した住宅を現地へ運び、設置して利用する「マニュファクチャード・ホーム」。移設可能な構造ながら、室内には一般住宅と同様の設備を備える。Takさんはテキサスで宿泊施設として運用している。画像は「ManufacturedHomes.com」より。
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――生命保険も、資産形成の手段として活用されているそうですね。

Tak はい。米国外の顧客に対応する中で知ったのが、オフショア(租税回避・低税率地)の年金・生命保険です。こうした商品は、売却益や配当、利子が発生してもその都度課税されず、運用益をそのまま再投資できます。税金による運用資金の目減りを抑えながら複利で増やしていけるため、長期の資産形成では大きなメリットがあります。

 アメリカは保険商品の選択肢も豊富です。たとえば、株価指数の値動きに連動して将来の受取額が増えて、受益人である本人と配偶者の両方が亡くなるまで年金支給が保証される年金型の商品など、運用機能を備えた商品も数多くあります。また、アメリカは転職が当たり前のため、以前の勤務先で積み立てた401(k)などの退職口座を、年金保険商品へ移す「ロールオーバー」も一般的です。こうした商品は日本在住者が利用できるものではありませんが、米国に駐在・居住している日本人にとっては、老後資金や長期の資産形成を考えるうえで選択肢の一つになると思います。

資産を固定しない! 
好機を逃さない投資の考え方

――株式では、現在どのような分野に注目していますか。

Tak いま特に注目しているのは、AIデータセンター向けのフォトニクス、つまり光通信関連です。AIの利用が広がり計算量が増えるほど、データセンター内では膨大なデータを高速でやり取りする必要があります。そのため、光通信部品や関連技術の重要性は今後さらに高まるとみています。

 投資する際は、特定の1社だけを見るのではなく、関連するサプライチェーン全体を幅広くチェックしています。どの企業がボトルネックを握っているのか、需要拡大の恩恵を受けやすいのはどこかを見ながら投資先を探しています。

――半導体は技術の進化が速く、専門性も高い分野です。投資するうえで、どこまで理解する必要があるのでしょうか。

Tak 正直に言えば、技術の細部まで含めると、私自身も理解できているのは2~3割程度だと思います。ただ、それでも投資判断はできます。重要なのは、技術をすべて理解することではなく、その技術がどこで使われ、需要がどの程度伸びそうなのか、それが企業の業績にどうつながるのかを押さえることです。

 そのうえで、業績に対して株価が高すぎないか、逆に悪材料以上に売られすぎていないかを見る。私は、こうした事業の成長性、業績、株価のバランスを重視しています。

 情報収集では、Xや専門ブログもよく使います。フォロワー数がそれほど多くなくても、特定の半導体技術や企業を長く追い、非常に詳しい分析を発信している人は少なくありません。すべてを理解する必要はありませんが、企業の決算資料などの一次情報と、専門家による質の高い分析に継続して触れていると、ニュースを見たときに「何が本当に重要なのか」が少しずつ分かるようになります。

――最後に日本の個人投資家へアドバイスをお願いします。

Tak 母の商売や華僑のネットワーク、そして私自身の金融キャリアから学んだのは「何を買うか」より「どう組み合わせるか」です。まず収入源を一つにしないこと。給与や事業収入だけでなく、配当や家賃など異なる収入源を持ちましょう。

 それは資産運用でも同様です。人気のS&P500やオルカン(全世界株)は、長期の資産形成に使いやすい商品ですが、あらゆるリスクを分散できているとは限りません。株式だけでなく不動産、債券など、値動きや収益の生まれ方が異なる資産を組み合わせるべきです。

 3つめに、税制を理解し味方につけること。日本とアメリカでは使える制度や金融商品は異なりますが、税負担を意識しながら運用するという基本的な考え方は共通しています。そして最後に運用で得た利益をできるだけ再投資に回せる仕組みをつくることです。
まずは、自分の収入や資産が何に偏っているのかを確認することからはじめてみるといいと思います。

本記事は2026年8月26日時点で知りうる情報を元に作成しております。本記事、本記事に登場する情報元を利用してのいかなる損害等について出版社、取材・制作協力者は一切の責任を負いません。投資は自己責任において行ってください。