株価が割安かどうかを、PERやPBRだけで判断しない。会社が持つ現預金や有価証券、不動産、さらに本業の収益力まで積み上げ、「企業の内在価値」に比べて株価が極端に安い銘柄を探す――。これが、シケモク投資家さんの「資産バリュー投資」だ。
リーマンショックでは資産のほぼすべてを失いながら、同じ手法を磨き続け、2022年に資産4億円でFIRE。現在、資産は約17億円に達した。元半導体エンジニアのシケモク投資家さんは、どのように候補銘柄を絞り、何を調べ、どこで買い、どこで売るのか。泥臭くも、再現性のある銘柄発掘法を聞いた。(須賀彩子、ダイヤモンド・ザイ編集部)
著書『サラリーマンが株で4億円。FIREして今17億円』
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銀行株の暴落で100万円を失った日、
投資の原点が生まれた
シケモク投資家(以下、シケモク)さんが株を始めたのは2000年のこと。
当時は総合家電メーカーの半導体開発部門に勤めており、会社の住宅積立制度に給与のほぼすべてを投じていた。年率7パーセントで運用してくれるというその制度は、当時の低金利環境ではありえないほど恵まれた条件で、入社以来コツコツと積み立てていたお金が1500万円近くにまで育っていた。
ところが、その制度が廃止されてしまい、資金が手元に戻ってきた。この1500万円を元手に、株式投資をスタートすることに。
最初に買ったのは、配当利回りの高かった電力会社株。さらに、当時暴落していた銀行株に手を出した。ところが、暴落は止まらず、株価は連日ストップ安に。300万円近い資金を入れたが、100万円が消えてしまった。
遠藤四郎さんの一冊が、
投資観を根底から変えた
その挫折の後に、一冊の本に出合う。
遠藤四郎さんの『株でゼロから30億円稼いだ私の投資法』だ。高卒で銀行に就職し、出世も見込めない境遇の中でコツコツと投資を重ね、資産を30億円以上(バブルのピーク時には80億円)にまで育てたという内容だった。
「一介のサラリーマンでも、こんなに資産を築けることに衝撃を受けました」
この本が示していたのが、「含み資産を持つ株を買え」という考え方だ。赤字企業でも、資産が豊富な会社なら、含み資産を売るだけで赤字を吹き飛ばせる。そういう会社なら、株価がストップ安になろうが持ち続けられる、という発想だ。
これを機に、シケモクさんは「資産バリュー投資」をやっていこうと決めた。
リーマンショックで
全財産を失いかけた教訓
下値が底堅いイメージの資産バリュー株だが、過去には、信用取引で痛烈な失敗も経験している。
2006年頃のJリートへの集中投資だ。不動産という資産の裏付けがあり、NAV倍率*が1倍水準まで下がっていたことを「割安」と判断し、ジャパン・ホテル・アンド・リゾート投資法人(当時)に4500万円(うち信用取引3000万円)を投じた。
*NAV倍率…J-REIT価格が、保有不動産を時価評価した純資産価値に対して何倍かを表す。株におけるPBR(株価純資産倍率)に相当し、1倍を下回ると割安と判断される。
しかし2007年夏から市場の雰囲気が変わり、リート価格がじわじわと下がり始めた。そして2008年にはリーマンショックで暴落。追証が次々とかかり、自分の意思とは無関係に、最悪のタイミングで売られることもあった。
「NAV倍率は0.2倍、分配金利回りは10%になっていました。喉から手が出るほどほしい割安水準にあって、絶対に手放したくなかった」と、レバレッジを掛けたまま、できるだけ握り続けた。
消費者金融から360万円、親から600万円を借りて追証の穴埋めをしたが、最終的に証券口座の残高は200万円まで落ち込んだ。
「株式市場では何事も起こりうると、骨の髄から理解した出来事でした」
なお当時、このことは妻には話していない。というのも、家族間の取り決めで、「会社の積立制度で戻ってきた1500万円はシケモクさんが投資に自由に使っていい。給料やボーナスは全額生活費として家に入れる」としていたためだ。ただし、「父から600万円を借りたため、父から妻に電話があったようです。バレていたかもしれません」
リーマンショック以降、信用倍率の上限は、現物の1.5倍程度とルールを決めた。株価が半分になっても耐えられる水準だ。
「資産バリュー株は基本的には底値が堅いはずですが、リーマンショックやコロナショックのような極端な局面では、何が起きるか分かりません」
リーマンショックでは、1500万円あった資産のほぼ全額を失ったが、めげずに資産バリュー株への投資を続けた。そして2013年には2000万円に回復、2015年には5400万円になった。そこからは順調に増え続け、2022年には資産4億円に達し、大好きな株に全集中するためFIRE(早期退職)。現在は17億円に達している。
スクリーニングから始まる、
泥臭い銘柄発掘
シケモクさんの資産バリュー株投資は、一貫して同じことを繰り返しているだけだという。それは「企業の内在価値が時価総額の何倍あるかを徹底的に調べ、飛び抜けて割安な銘柄に集中投資する」というもの。飛び抜けて割安な資産バリュー株を複数、分散して持っていれば、1~2年後くらいに、そのうちのどれかの株価がボンと上がるという。その投資手法を紹介する。