2026年8月、2027年8月の2段階で高額療養費制度が改正される。治療や薬が高額化していく昨今、毎月の医療費の支払いの上限を定めて私たちの家計を守ってくれる本制度。今回の改正では、上限額の引き上げや、「年間上限」の新設など、大きな制度変更が盛り込まれている。ファイナンシャルプランナー/行政書士の河村修一さんに改正の内容を解説してもらった。(財前孝汰郎、ダイヤモンドZAi編集部)
誰もが利用できる「高額療養費制度」
医療費の支払いが一定額でストップする
予期せぬ大きなケガや病気で医療費が高額に──。そんな時、その支払いを一定額に抑えてくれる制度が高額療養費制度だ。誰もが利用できるこの社会保障制度が、2026年8月と2027年8月を境に改正される。今回の改正は年齢や収入にかかわらずほぼすべての人に影響を及ぼすため、その内容を理解しておく必要がある。
改正の話の前に、まずは高額療養費制度の仕組みを理解しよう。そもそも、医療費は年齢や所得に応じて自己負担の割合が決まっている。未就学児は2割、6歳~69歳は3割、70歳~74歳は原則2割、75歳以上は原則1割だ。70歳以上でも、現役並みの所得があれば2~3割を負担することになる。こうした公的医療保険制度によって、医療費の支払いは多くの場合低額に抑えられる。
しかし、自己負担が3割だとしても、大きなケガや病気などで医療費が高額になれば、支払いの負担も大きくなる。そのような時に利用できるのが高額療養費制度だ。年収(所得)や年齢に応じて1カ月(月の初日~末日)の医療費の支払いの上限額が定められており、その上限で支払いが自動的にストップする、もしくは上限を超えて支払った場合にその超過分が還付される仕組みだ。
年収500万円の40歳の人が、月に100万円の医療費がかかったケースを見てみよう。この場合、7割を健康保険が負担してくれるので、100万円×3割で自己負担は30万円になる。ただし、年収500万円の人は、高額療養費制度で支払いの上限が8万5800円+α(正確には8万5800円+(総医療費-28万6000円)×1%)に定められている。そのため、実際の支払う金額は9万2940円で打ち止めに。本来の自己負担30万円のうち約21万円を高額療養費制度が負担してくれるイメージだ。
高額療養費制度の利用方法だが、マイナ保険証を利用している人は、支払いが高額になっても自動的に上限でストップする。つまり、手続き不要で高額療養費制度が適用される。一方で、マイナ保険証を保有せず資格確認書を利用している人は、手続きが必要だ。方法の1つは加入している健康保険に申請して「限度額適用認定証」を発行してもらうこと。それを病院の窓口で提示すると支払いが上限でストップする。もう1つは、支払い後に健康保険に還付の申請をする方法。病院の窓口で一時的に上限を超えて支払う必要があるが、その超過分が後日還付される。
「原則、手続き不要で高額療養費制度が適用されるため、普段からマイナ保険証を利用するのがおススメです。マイナ保険証を利用していない人は、医療費の支払いが高額になった時に注意が必要。加入している健康保険によっては、高額療養費制度の支給対象になっていることを親切に通知してくれるところもあれば、してくれないところもあるからです。つまり、制度自体を知らないでいると、還付の申請ができず、高い医療費を支払ったままになる恐れがあります」と河村さんは説明する。高額療養費制度に限らず、社会保障制度に関しては存在自体を知っておくことが何より重要だ。