暗号資産ETFの解禁で
利便性が大幅アップ!
この「損益通算の壁」を突破する救世主として注目されているのが、国内での暗号資産ETFの解禁だ。今回の金商法への移行に伴い、投資信託に関するルールも改正され、国内でも暗号資産を対象としたETFの組成が認められる方針となっている。
暗号資産ETFは税制上、表の中の(A)上場株式などのグループに分類される見込みだ。例えばビットコインそのものではなく、ビットコイン価格に連動するETFを買えば、株や他の投資信託の損益と相殺ができるようになる。しかも、「源泉徴収あり」の特定口座で管理すれば、面倒な確定申告は不要だ。加えて、もしNISAの成長投資枠の対象になれば、非課税での運用すら視野に入ってくる(NISAで買った場合は、すべての資産が損益通算の対象外)。
平石さんは、「ウォレット*の自己管理や複雑な税金計算を避けたい個人投資家にとっては、利便性の高い暗号資産ETFが選択肢となるでしょう」と分析する。
*暗号資産をデジタル上で管理する仕組み。
海外の取引会社やミームコインは
最大55%のまま取り残されるか
今回の税制改正では、もう1つ罠がある。それは、「すべてのコインと、すべての取引会社(暗号資産取引所を運営する取引業者)での取引が、申告分離課税になるわけではない」という点だ。申告分離課税の適用は、「金融庁登録の取引会社」を通じて、法令上の要件を満たした「特定暗号資産」を取引した場合などに限定される予定だ。
以下のようなケースは対象から除外され、今後も最大55%の総合課税のまま据え置かれる可能性が高い。
● 海外の取引所での売買益
● DEX(分散型取引所)やDeFi(分散型金融)での取引利益*1
● 要件を満たさないマイナーな「ミームコイン*2」などの取引
● ステーキングやレンディングの報酬*3
*1 特定の運営会社がなく、プログラムによってブロックチェーン上で暗号資産の取引や貸し借りを行う分散型の仕組み。
*2 ネット上のジョークや流行をモチーフに作られた、実用的な目的を持たない暗号資産。
*3 保有する暗号資産を一定期間預けたり(ステーキング)、他者に貸し出したり(レンディング)することで、報酬を受け取る仕組み。
「『海外の取引会社でミームコインを売買して儲ける』といった、従来のハイリスクな投資スタイルは、今後も総合課税となる可能性が高いでしょう。税制改正の恩恵を受けられるのは、あくまで金商法や税法の基準を満たした投資だけです」と平石さんは注意を促す。
税負担100%超の相続地獄が緩和
今後のさらなる改正の注目点は?
今回の税制改正において、実は専門家の間で熱く評価されているのが「資産課税(相続税)」における歪みの解消だ。これまでは、数億円規模にまで暴騰した暗号資産を相続した場合、相続した金額以上に税金が発生する、恐ろしい「二重課税」が起きていた。
「相続税の最高税率は55%です。納税資金を確保するために相続した暗号資産を売却すると、現行の制度ではさらに最大55%の総合課税が課されます。結果として税負担率が100%を超え、引き継ぐ財産以上の負担が生じるケースが指摘されてきました」(平石さん)
特定暗号資産が一律約20%の申告分離課税へ移行すれば、相続税と所得税を合わせても税負担率が100%を超えるといったケースはほぼ解消される。
しかし、これで「株と完全に並んだ」わけではない。平石さんは、今後のさらなる改正の注目点として以下の点を挙げる。
「相続税を計算する際、現在は『相続した日の時価』でしか評価できませんが、これを上場株式のように『過去3か月間の平均価格のうち最も低い価額』で評価できるようなルールの改正が行われるかどうかも大きな焦点です」(平石さん)
暗号資産が株や投資信託と並ぶ、利用しやすい一般的な投資先となるには、まだクリアすべきハードルが残されている。
本記事は2026年7月29日時点で知りうる情報を元に作成しております。本記事、本記事に登場する情報元を利用してのいかなる損害等について出版社、取材・制作協力者は一切の責任を負いません。投資は自己責任において行ってください。