報酬の半分以上が自社株という人も!
アメリカで“気づけば億り人”が生まれるカラクリ

――しかしアメリカで、新たな富裕層が次々と生まれているのも事実です。

Tak 資産を築くきっかけは、働いている業界によって大きく違います。私の周りでは、テクノロジー企業に勤める人の多くが、報酬の一部をRSU(譲渡制限付き株式ユニット)で受け取っています。一定期間勤務するなどの条件を満たすと、自社の株式を受け取れる仕組みで、現金給与より株式報酬のほうが多い人も結構いるんです。ポイントは、受け取る株数があらかじめ決まっていることです。

 似た仕組みに、ストックオプションがあります。ストックオプションは株価が上がらないと利益が出にくいですが、RSUは付与条件を満たせばその時点の株価分の価値が確実に手に入るため、より着実に資産を築きやすいという強みがあります。アメリカでは上場会社はRSUを取り入れ、未上場会社はストックオプションを付与する場合が多いです。

――RSUは金額ではなく、株数が設定されるのですね。

Tak そうです。たとえば、入社時に「4年間で合計何株を支給する」と決まります。その後、株価が5倍になれば、同じ株数でも受け取る時点の価値は5倍になるわけです。仮に、現金給与が年15万ドル、株式報酬が当初の株価で年25万ドル相当なら、株価が5倍になると株式報酬だけで年125万ドル相当。現金給与と合わせた年収は140万ドルになる計算です。

 アマゾン・ドット・コムも、2022年に引き上げられるまで、基本給の上限は原則年16万ドルでした。創業者のジェフ・ベゾスの基本給も、長年、年8万ドル程度。特にテック企業では、このように「現金は抑えて、株で報いる」という考え方が広く見られます。ただし、アメリカの企業すべてに当てはまるわけではありません。伝統的な産業では、株式報酬の制度自体がない企業もありますし、制度があっても、経営幹部など一部の上位職に対象が限られるケースも多いんです。

――なるほど。株式報酬を受け取れる環境なら、投資の知識が特別豊富でなくても、勤務先の成長が自分の資産を増やすきっかけになるのですね。

Tak ええ。株式報酬を通じて、テック企業の成長とともに資産を築いた人が一定数います。これが、アメリカで富裕層が生まれる、大きな要素だと思います。

 こうして得たお金は、住宅市場にも流れ込みます。2026年10月末現在、その動きが目立つのがサンフランシスコです。住宅の新規供給が限られる一方で、テック企業で働く人たちが、保有株式を売却した資金で住宅を購入しています。そのため、売り出し価格を大きく上回る金額で成約することも増えており、中には数億円、さらには10億円もの上乗せとなるケースもあります。

「お金が増える人・減る人」は何が違う?
資産を増やし続ける人に共通する習慣

――ところで一般の家庭にとっては、住宅や教育にかかるお金の準備は大きな課題です。特に、高いといわれる大学進学の学費は、どのように備えているのでしょうか。

Tak アメリカの大学、特に私立のトップ校は学費が非常に高い一方、世帯年収が一定以下の家庭には授業料の補助や免除があります。審査では親の資産も細かく見られます。ただ制度によっては、401(k)などの退職資金用の口座や、保険の形で保有する資産は対象に含まれない(抜け道になる)場合がある。そのため、資産をどういう形で持つかまで考える家庭もあるんです。

 とはいえ、そこまで計画的なのは一部の人です。学費の一部を学生ローンで賄い、大学を卒業してからも何年も返済を続ける人は少なくありません。

――リテラシー(知識)の差でその後の資産形成に差がつく一例ですね。先ほどの株式報酬などで大きな資産を手にした人も、その後の資産形成で差がつきそうです。

Tak はい。その後も増やし続ける人と、減らしてしまう人に分かれます。なぜ差がつくかといえば、身も蓋もない答えですが、増やす人は「お金を増やすことが好きな人」です。友人同士で不動産や事業、投資の話をよくするし、税制や投資について常に学んでいます