【回答】海外も含め多数の子会社・孫会社に及ぶ5年分すべての四半期決算の数字を洗い直すのに時間を要している。監査役の独立性の確保は改善計画の核心。信頼を取り戻せるよう、やるべきことを一つずつ実行していく。
【質問】監査した人に聞きたい。1+1は2ですよ。1+1=1.5とかになっていたのに、何で監査を通したの?
【回答】(監査役)批判を真摯に受け止める。
(岸田社長)第三者委員会の報告書でも指摘されたように、経営陣も監査人に対して誠実に対応していなかった。
【質問】『不正会計』と『粉飾決算』はどこが違うのか? なぜ刑事罰や民事の損害賠償の話が出てこない? それに永守さんのプレッシャーの与え方は、普通の社会では『パワハラ』だ。なぜ他のコンプライアンスの役員や社外取締役は機能しなかったのか?
【回答】長期間にわたり多拠点で不正が行われていたことを見抜けず、忸怩たる思い。役員の責任追及については、現在専門家を交えた「責任調査委員会」で法的措置も含めて慎重に検討している。けじめとして、報酬の自主返納(30%)を行う。
【質問】社外取締役の佐藤氏は財務省事務次官OBで、証券のプロ。なぜ不正を見抜けなかったのか。
【回答】(佐藤慎一社外取締役)申し訳ない。反省点は「木を見て森を見ていなかったのではないか」ということ。個別の事案は見ていても、全体としてニデックという森がどうなっているかという視点が欠けていた。
結局、経営陣を監視する立場にいた取締役たちは、質問には真正面から回答せず、どこか他人事のような回答に終始。カリスマ経営者の前では、社外取締役や監査役が機能せず、単なる「お飾り」にすぎなかった実態が露わになった。株主たちも不満を表明するが、「永守さんの下にいたら何も言えないか」といった諦めムードで、深く追及する株主はいなかった。
怒り一辺倒ではない意外な展開
株主が抱える「永守氏への愛憎」
総会会場の外には「怒りの声」を拾おうとメディアも集まっていた。しかし、意外にも株主たちの声は批判や株価下落への怨嗟の声ばかりではなかった。そこには、ニデックという会社、そして永守重信というカリスマに魅せられてしまったがゆえの「愛憎」が滲み出ていた。
【質問】妻から「早くそんないい加減な会社の株は売って」と毎日のように言われている。社長、絶対に上場廃止にしないという固い決意をここで聞かせてください。それがあれば、私はまだニデックの株を持ち続けますよ!
【回答】上場を維持することは私たちの絶対の覚悟。プロセスをすべて透明にし、二度と不正が起こらない仕組みを作る。もう一度、信頼いただける会社に再生させる。
さらに別の株主は、静かに、多くの総会参加者が感じていた「永守氏不在の寂しさ」を突きつけた。
【質問】永守さんが議長だった時は、どんなに厳しい環境でも会社を成長させるという圧倒的な熱量が伝わってきた。だから応援しようと思えた。でも、今日、岸田社長の話を聞いていると、未来へのワクワクするような期待感が伝わってこない。
【回答】ご指摘は真摯に受け止める。しかし、永守氏と同じようなリーダーシップでは、この難局が乗り越えられるとは思っていない。 私たちは今、これまでのニデックとは違う『第二創業』に向かっている。どうか、私たちの新しい再生への覚悟を見届けていただきたい。
20年以上にわたり株主を続けているという株主は不正よりも、過去20年間の成長に着目し、最後にこう締めくくった。それは総会に参加していた多くの株主、永守ファンの声を代弁するようなものだった。
【質問】私は永守さんの実績があったからこそ、ニデックがここまで大きくなったと確信している。起きてしまったことは仕方がない。だからこそ、2027年以降の株主総会では、『こんな新しい商品を作ったんだ』という明るい報告が聞けることを心から期待している。
【回答】頑張って再生に取り組みます。
もちろん、永守氏を懐古する声がある分だけ、「永守氏の影響力は残っているのでは?」という疑念を抱く株主からの追及もあった。
【質問】永守氏はまだ大株主だ。永守色を脱せられるのか?
【回答】1人の株主でしかない。経営にタッチしてないし、させない。
【質問】永守財団の事務局がまだニデック本社内にある。これは利益供与ではないか。
【回答】今後、見直しを検討中だ。
【質問】不正会計ということは、過去の配当も不正では? その場合、大株主の永守氏に配当金を返金してもらえないのか?
【回答】調査中のため、何も決まっていない。
「恐怖で現場を縛るな!」
総会終盤には建設的な提言も
過去の不正や失敗をただす質問が一巡すると、第二会場にいた株主からの建設的な質問と提案が出てきた。
【質問】不正に対する更迭や処分という『恐怖』だけで現場を縛れば、海外も含めて社員は萎縮し、組織は完全に崩壊する。必要なのは人を疑うことではなく、物理的に不正ができない仕組みの構築ではないか。ソニーやトヨタから新しい役員が来たが、彼らの強みのデジタル化の技術を活用して、不正ができない仕組みを作るべき。人間を疑う書類仕事を増やすのではなく、システムで現場を守り、誇りを持って働ける環境を約束してほしい。
【回答】現場も不正をしたくてしているわけではない。(納期やプレッシャーに)追い詰められた崖っぷちでやむを得ずやっている。そんな現場を守る必要がある。社内には、いまだに書類やメールで工程変更をやり取りしている古い現場がある。ここをデジタル化する。AIも活用して誰かが不正を申告する前に自動でアラームが上がるような『属人化しないシステム』へと、今後5年間で1000億円を投資して構築していく。
「風通しがよくなった」と耳打ちする社員
データセンター銘柄として飛躍を期待
50年におよぶ猛烈経営がもたらした成長と、その裏で粉飾と不正まで招いた歪み。その結果、カリスマ創業者は辞任し、株主総会からはワクワク感や高揚感も消えた。しかし、そこには過去の負の遺産と決別し、まっとうな会社へ生まれ変わろうとする意志も見えてきた株主総会だった。
実際、総会会場の外には、自社製品の展示コーナーもあったが、そこにいた説明係のニデックのエンジニアは、「(永守氏が辞めて)明らかに風通しが良くなってきました」と記者に耳打ちしてくれた。
いま、ニデックはデータセンター向けのハードディスク用モーターと、高性能な冷却システムが絶好調。もし不正会計がなければ株式市場では「AI・データセンター関連銘柄」として、人気化していたかもしれない。あらためて、「不正なんてしなくてもよかったのでは」という思いと、「不正発覚と永守氏の辞任が契機となり、成長力ある真のグローバル企業へ生まれ変われるのでは」という期待を抱かせる総会であった。
※ニデックの株価の見通しや、そのほかの人気企業の株主総会の様子については、『ダイヤモンドZAi』2026年9月号(7月21日発売)を参照してください。
本記事は2026年7月18日時点で知りうる情報を元に作成しております。本記事、本記事に登場する情報元を利用してのいかなる損害等について出版社、取材・制作協力者は一切の責任を負いません。投資は自己責任において行ってください。