プロが教える「適正な投資額」と
「お金の3分類」ルール
では、普通の人にとって適正な投資額とはどのように決めればよいのだろうか。井戸さんは「手取りの何%を投資に回すか」を考える前に、まず手元のお金を目的別に以下の3つに整理することを提言する。
(1)生活防衛資金(即座に動かせる預貯金)
人生の不測の事態(病気、ケガ、突然の失職など)に備えるための資金。投資は、この資金を確保してから始める。
■単身の若い世代:最低100万円
■ファミリー世帯:半年〜1年分の生活費(例)月25万円使う世帯なら300万円程度
(2)10年以内に使う予定のあるお金(中期資金)
子どもの教育費や住宅の購入頭金など。
(3)10年以上先に使うお金
NISAやiDeCoなどの長期投資で形成するお金。
「毎月の貯蓄・投資の割合の目安としては、若い世代であれば手取り収入の20%を蓄えに回すのが理想的。(1)の生活防衛資金(100万円)が用意できたのなら、収入の10%を貯蓄に、10%を投資(NISA)へ振り分けるといいでしょう」(井戸さん)
iDeCo貧乏にならないための
iDeCoの「上手な使い方」と「卒業」の心得
次に井戸さんは、来年iDeCoの枠が拡大しても「iDeCo貧乏」にならず、制度の恩恵だけを賢く享受するためとして、以下の3つのポイントをあげてくれた。
(1)自分の「所得税率」から節税効果を冷静に計算する
iDeCoの大きなメリットが、掛け金が全額所得控除されること。だが、年収が低く所得税率が5%〜10%程度の若い世代や、そもそも所得税を払っていないパートタイム勤務の場合、節税の効果は低いか、またはゼロだ。無理をして枠いっぱいの高額な拠出をする意味は薄いと言える。年収が上がり、税率が高くなる40代以降になってから拠出額を本格的に増やす形でも十分に間に合う。投資をする場合も、自由度が大きいNISAを優先して活用しよう。
(2)受け取り時(出口)の税金と社会保険料のリスクを知る
iDeCoは積立時こそ節税になるが、「受取る時」に課税される仕組みになっている。年金形式で毎月受け取ると、公的年金等控除の枠を超えた分に所得税・住民税がかかるだけでなく、健康保険料や介護保険料の負担率が大きく跳ね上がるリスクがある。さらに、「十分な所得がある」とみなされ、将来的には医療費の自己負担率が高くなったり、低所得者向けの各種給付の対象外となったりすることも想定される。
「基本的には、退職所得控除の枠を活用できる一時金(一括受取)で受け取るのが効率的です。ただし、数十年後の退職金税制は予測できません。政府の税制の議論等を見ると、将来は退職所得控除の税制が見直される(縮小される)可能性が高いので、iDeCo一辺倒の老後資金準備や、過度な節税期待は控えるべきです」(井戸さん)
(3)年齢に応じた運用変更と「70歳前後での卒業」
今回の改正では、掛け金を拠出(積立)できる加入可能年齢が、従来の「65歳未満」から「70歳未満(70歳の誕生日前日まで)」へと5年間延長される。なお、受取りの最終年齢は現状の75歳のままで変更はない。
「5年間延長となることで、運用期間や受取りがどんどん後ろ倒しになりそうです。70歳まで積み立てていると、ギリギリの75歳まで運用したいと思うかもしれませんが、70代になれば判断力も衰えてきます。70代前半でも突然の大病で倒れることも珍しくありません。70代で資産の売却や入れ替えといった作業がないようにするべきです。70歳までには一時金として一括受給し、スッパリ卒業するのが現実的です」(井戸さん)
老後を楽しむための支出より投資を優先したり、健康状態を顧みず「長く運用したい」と固執したりすることも、iDeCo貧乏の別のかたちと言えるだろう。
本記事は2026年8月15日時点で知りうる情報を元に作成しております。本記事、本記事に登場する情報元を利用してのいかなる損害等について出版社、取材・制作協力者は一切の責任を負いません。投資は自己責任において行ってください。