株の相続でかかるのは
相続税だけ?

「いいえ、含み益のある株の場合、売却する際に売却益にも課税されます」と説明するのは、相続専門税理士の前田智子さん。

 たとえば、100万円で買った株が1000万円に値上がりしていた場合、それを相続する際にはまず、1000万円の評価額に対して相続税がかかる。

 さらに、相続した人がその株を売却するときには、900万円(1000万円-100万円)の売却益に対し、20.315%が課税される。

 ただし、「取得費加算の特例」という救済措置があり、相続開始日の翌日から3年10カ月以内にその株を売却した場合に、支払った相続税の一部を株の取得費に加算できる制度だ。

 取得費が高くなれば儲けが減るので、売却益への課税を少し軽減することができる。

 このように、含み益が大きい株を相続する場合、売却して現金化する際にかかる売却益への課税の分、実質的な「手取り」は少なくなることに注意したい。

NISA口座は
そのまま引き継げない!

 松井証券顧客サポート部によると、「亡くなった方のNISA口座は、相続人がそのまま引き継ぐことはできません」とのことだ。

 NISA口座の保有株は、まず亡くなった方の課税口座に移され、そこから相続人の課税口座に移管される。

 また、前田さんは「NISA口座の株を相続する際は、株の取得価額は亡くなった日の時価に再設定されます。

 そのため、株を購入してから亡くなった日までの含み益は非課税となります。この点で、NISA口座での運用は、相続人にとっても大きなメリットがあります」と話す。

自分のiDeCo
死亡後はどうなる?

 松井証券顧客サポート部によると、iDeCo(個人型確定拠出年金)で運用していた投信などは、現金化され、死亡一時金として遺族に支払われる。

 前田さんは、「iDeCoの死亡一時金は、『死亡退職金』として基礎控除と別の非課税枠があります。相続人全体で『500万円×法定相続人の人数』が非課税枠になります。生命保険の非課税枠とは別枠です」と話す。

信用取引やFXは
相続で特に注意!

 松井証券顧客サポート部は、次のように説明する。

「信用取引をしていた場合、その建玉(未決済の信用取引)は決済されます。亡くなったとの連絡を受け、提出された戸籍謄本などを確認し、死亡日ではなく死亡の事実が確定した後に当社にて決済を行います。FX口座も信用取引と同様の扱いです。」

 また、ファイナンシャルプランナーの藤川太さんは、「信用取引は、資産がゼロになるだけでなく、マイナスになるリスクがある取引です。

 万が一に備えて、家族に信用取引をしている事実だけでも伝えておきましょう」と話す。

 最も危険なのは、信用取引による借金を抱えたまま亡くなるケースだ。家族がその事実を知らないと、その借金を背負ってしまうことになる。

 相続放棄という選択肢もあるが、これには3カ月以内という期限があり、借金の存在に気づかないまま期間が過ぎると放棄できなくなる可能性がある。

暗号資産の相続は
株より税負担が重い? 

 暗号資産の相続については、たまらん坂税理士法人代表の坂本新さんに聞いた。

「暗号資産の相続税は、亡くなった日の時価を評価額として算出されます。株とは異なり、前月の平均値などから選択することはできません。

 また、含み益のある暗号資産を相続し、それを売却するときには、売却益に課税されます。暗号資産の売却益は、株と違って『雑所得』です。

 給与所得などほかの所得と合算して課税され、所得税は5~45%の累進課税です。これに住民税10%が加わるため、最高税率は合計55%です。含み益が大きい場合は要注意です」とのことだ。

 株や投信だけでなく、信用取引やFX、暗号資産の有無も含めて、家族が手続きに困らないよう情報を整理しておきたい。 

※今回、アドバイスしてくれた専門家のみなさん

税理士 前田智子さん
税理士法人レディング所属。相続の相談実績4000件超!
著書に『相続専門税理士が教える 相続のめんどくさいが全部なくなる本』がある。

生活デザイン代表 藤川 太さん
ファイナンシャルプランナーで、家計の個人相談のパイオニア。資産運用から相続まで精通!
『「新NISAバブル」に気をつけろ!』など著書多数。

たまらん坂税理士法人代表 坂本新さん
暗号資産に関する税務のスペシャリスト。

松井証券顧客サポート部

本記事は、ダイヤモンドZAiの内容紹介を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で運営しているものではありません。投資は自己責任において行ってください。